中古CD屋さんでバイトをしている。
中古屋さんにいると値入れを間違えてしまっていたり、店頭に出ている途中で人気が落ちて行ってしまったりなどで、ひたすら売れないものがあったりする。
この店舗では滞留300日を区切りとして、それを過ぎたものは特価の値段にしたりして、原価は度外視で売れるようにするシステムにしている。
そういうものはリストを出されて、それをひたすら宝探しのように探すときがある。
探していると中々見つからないものもあったり、時よりもうこれは盗まれたんだろうなと思われるものもある。
先日、滞留1200日超えの在庫が見つかったと言う話をしていた。
「ざっくり勘定で4年ですね。」と口走った。
4年間誰も見つけることも出来ず共に暮らしていたのか。元旦しか休みのないこのお店で。
なんなら僕自身は4年もいないから、そのCDの方が先輩である。
店長が「ほぼオリンピックと一緒じゃん。」と言った。
「そう言えば店長、よくオリンピックって言葉使うなぁ」と思った。
ある日の朝礼で売上の話をしているとき、
「昨年の2月はオリンピックがあったはずの年で、うるう年だったため1日営業日が多く…」
というのを枕詞に話し出した日が3度もあったことを覚えている。
聞くたびに
「そうか、オリンピックの年はうるう年なんや」と思ってたが、
3度目にはマスクの下で少し1人でほくそ笑んだのを覚えている。
「この人、オリンピックとうるう年をセットで覚えている人なんや」と思った。
そんな店長が4年というワードでまたオリンピックを引き合いに出した。
ワールドカップではない、EUROでもない。
オリンピック。
店長は音楽以外興味ないオタクのような感じがプンプンある50代だ。
レコードはプレーヤーが家にあるとたくさん買ってしまうからという理由で処分したようなそんな音楽に突き進んでしまいそうな人。
周りの誰にもそんなことは言わないけども、意外とオリンピックをめちゃくちゃ心待ちにしているのかもしれない。
そう思うと店長に可愛らしさを覚えて来て、声に出して笑ってしまった。
何かチケット手に入れてはったのかな。
何の競技のチケット手に入れてたんやろ。
推しの選手とかいたんかな。
オリンピックって東京と決まった頃から政治的な雰囲気もあり、心待ちにしてると言いにくい状況がずっとあったなと思う。
東京オリンピックがこんなことになり、ザマァみろ的な反応をしていた人は1年前少なからずいた気がする。
僕は待ってる人やいろんな人の(それは選手に限らず、お客さん側も)ターニングポイントになる可能性も秘めてるものなのだから、
せっかく決まったなら腹括って成功する方向の雰囲気でやってもいいんじゃないかなと思っていたが、
昨今の状況を見るとさすがに「無観客でもやろう!」という気持ちにはなれなくなる。
僕自身もボクシングの決勝のチケットは取っていて、払い戻しもしていないままで権利を保管している。
店長はオリンピック中止が正式に決まったとき、どんな反応をするんだろう。
心で悲しんでる姿を勝手に想像して、
僕は少しだけ愛しさを覚えてしまうのだろう。
あと仮に今年開催されたとして、オリンピックとうるう年の周期はズレてしまう気がしている。
それはそれで店長は自分の概念をズラさずに済んで、少しホッとしたりするのかもしれない。