中敷きがズレてくような日々

煩悩、戯言の半径30cm

『反社』さま2名様

飯屋に入店

お会計が少し混み合う瞬間に入ってしまい、ひとまず名前を書かずに待つ。
そのすぐ直後に入ってきたカップルのグラサンロン毛男が合間をずかずかと掻き分けて名前を書いた。
周りに迷いのないオラついた掻き分け方で「え」と驚きながらも書いてない自分が悪かったな、抜かされてもうたな、と思いながら2番目に名前を書いておく。
なんとなく前の人の名前を見てみる。こういうときってなんとなく名前を見てしまうものだと思う。

『反社』

反社?自ら言うかよ、たしかにそんな見た目やったけど。
んなわけないとよくよく見ると
「白石」と書いてあった。
決して字が汚いというのは適してない。なんとなく上下をキュっとして右左への移動が大きく、且つ折り返しが筆記体の綺麗さで表現していたがために反社に読めてしまった。

たしかに社の左の上のちょんの部分がなくて、石だと思えた。
「こんな字読めるか」と思い、なんとなくムカついて自分の名前書きついでに左上のチョンを書き足した。

大勢の会計が済んだのでテーブルはすぐ空く。5分もせずに呼ばれた。

「おつぎ2名様のはん、はん、はん…」
やっぱそう読めるよな?!
ただ店員さんも反社って自ら書く人なんておらんと思ったのだろう。

「漢字のかた〜」
漢字で書いてる人なんいっぱいおるて!
グラサンオラつきロン毛男は
白石改め反社a.k.a.漢字となった。

a.k.a.漢字が「白石」と投げ捨てる用に言った。
「あ、白石さま〜」

僕はイタズラしたのがバレて反社にぶん殴られるかと思ったが、
「なんで読めねぇんだよ」のつぶやき小言が横を通るだけで終わった。

書き足したチョンがなければ店員さんもギリギリ解読出来たかもしれないが、チョンひとつで社に読めるように僕がミスリードしたかもしれない。

世の中もほんの少し味付け、チョンひとつの味付けでまったく違う世界線が見えたりするもんなんだと思う。

チョンを書かなかった世界線でも店員さんが「はん、はん、はん…」とギリギリまで反社とは言わんようにしたのか、というのも確認してみたい。

僕が無料でタイムマシンを操れたら1回戻ってその世界線を見てからもう1回戻って、またチョンを書く世界線に戻すと思う。

少し迷惑はかけたかもしれないけれども、それは申し訳ないけども、このくらいの遊び心は持ちながら生きていたい。

その後も「あの字は反社フォントだった。」だの「反社フォントになったのは彼がかけてた反射メガネだったから書いてる字がよく見えなかったのではないか。」と懲りずに反社遊びをしていた。
そして人が飲んでいる最中のグラスに乾杯する自己中乾杯を生み出して、真面目な話をしようとしたら口噴射して目の前の彼女の目に唾液をふっかけていた。
何故だか泣くほど笑っていた。

今日は仕事で前回の会議の時に大失敗した数値発表の練習をさせてもらったが、なかなか出来ずに苦労した。
当たり前のことを当たり前に言う。
いい意味で違和感を与えずに気にしなくなる喋り方をする。
ここの当たり前に喋ることに辿り着くまでに10回以上の反復練習が必要だった。
数値発表は社会性が問われて難しい。
ある意味、反社は俺だとも思う。