中敷きがズレてくような日々

煩悩、戯言の半径30cm

ヴァンフォーレ甲府vsブラウブリッツ秋田 2022.7.10


やっぱり応援しているチームの勝ち試合を観るのは格別だ。

 

ヴァンフォーレ甲府vsブラウブリッツ秋田を観に行った。

 

甲府はJ2に落ちてきてもう5年目

 

最初の年こそ9位だったものの
そこから伊藤彰監督の下、5位、4位、3位と1年に1つずつ順位を上げてきた。
特に去年の終盤戦はチームが完成形に近く、このまま選手の流出も極力抑えれたら…今年こそ自動昇格出来る2位以内に…!!
と思っていたところに伊藤彰監督が昨年のJ2優勝チームであるジュビロ磐田に引き抜かれてしまった。
監督どころか渋谷コーチ、山岸GKコーチもみんなセットでジュビロに行ってしまい、チームの作り直しを余儀なくされた。

 

元からJ1にいたチームではなく、この年に敵として闘ってきて優勝されてしまったジュビロに行くというのが悔しかった。

 

しかしながら例年よりは選手の流出を大幅に防いで、今シーズンを迎えることが出来た。

 

今年も昇格争いする気満々でいたが、現状は16位

 

現実はまるで甘くない。

 

今年はとにかく引き分けが多かった。点が取れないのもあるが、長年誇ってきた堅守も失われていく。
1点取ったらどこか安心感すらあったこれまでのシーズンとは違い、先制点取っても追いつかれてドロー。複数得点は取れない。

 

そんな試合が多くあった中で、守備陣・最終ラインを高めに調整することによって、昨年チームのスタイルを維持して支えていた新井涼平キャプテンの怪我からの待っていたが一向に音沙汰がなく。

 

そして出された文春砲。
9年も在籍していたキャプテンは帰ってくることはなく、悲しい別れを歩むこととなった。

 

新キャプテンとして荒木翔が就任し、心機一転のつもりでいたが、、、
これまで引き分けだった試合も次第に負けに転じてくるようになり、
この秋田戦までについに3連敗を喫してしまっていた。

 

特に4日前のvs仙台戦は0-3というスコア以上に内容が悲しい試合。見ていて寂しくなる内容であった。

 

そんな中迎えた秋田戦。
在籍20年目になる大ベテラン、オミこと山本英臣42歳がスタメン出場する。

 

オミもスピードや身体のキレの衰えは見えてきているものの、まだそこにいる存在感を見せつけてくれる。

 

この試合こそ負けたら、J3への降格の道すらある。

 

そんなある意味、背水の陣で臨んでいた。


しかしながら試合立ち上がりから、見事な秋田ペース。

 

後ろの守備陣からパスを繋ごうとする甲府に対して、秋田は1人ずつマークをビシッとつけてきた。

 

繋ぐスタイルをとる割にはそれをかいくぐる自信のない甲府は、諦めて最前線のフォワード、ウィリアンリラに向けてボールを蹴り入れる。
しかしここでマッチアップするのは秋田のディフェンダー千田選手。

 

千田は空中戦に強みを持っていて、リラには勝てる計算だったのだろう。その読み通りリラはなかなか千田には勝てず。
難しい戦いを強いられていた。

 

まさに秋田の作戦にハマっていく。
その中でも自分たちにボールが転がって来ても、選手間でのパスも合わず、簡単に失ってしまう。

 

そして取り返そうとする中でファールを取られて、フリーキック
ゴール前に直接ボールを入れられ、肝が冷える瞬間がたくさんあった。

 

これは失点するのも時間の問題…というところで、32分。山田陸のボールを失わない2つの粘りのプレーから甲府のエース長谷川元希のゴールが生まれる。

 

そこからの甲府はまるで別のチームになったではないか?と思うようなプレーだった。

 

先制点もすでにそうだったが味方を信じて走るプレーが増え、次第にパスミスも減っていき、仮にボールを失っても何人もが囲んで取り返しに行くようになる。

 

さっきまであんなにパスミスをして、相手にペースを握らせてしまい、走るべきところで走ることもできず、焦れていたチームがたった1つの得点でミスも減り、伸び伸びとしてプレーが増えていった。

 

 

3連敗は思ったよりも選手たちに重くのしかかっていたのを実感した。

 

メンタルに余裕が出来ることによってミスが減っていくのは、サッカーに限らず生活のいろんな場面でも同じだ。
心は少し余裕を持ってやっていかないと、アイデアも生まれにくい。

 

ウィリアンリラも千田と必要以上に戦うことをやめて、サイドバックの選手やもう1人のセンターバックの小柳とのマッチアップに逃げたり、とすることによってボールを収めれるようになり、甲府の時間が続くようになっていく。

 

そう、嫌な相手と真っ向から戦う必要なんてない。やれる場所に自ら逃げて、上手いことやれたらいいだけなんだ。
こういう駆け引きがスタジアムで観ると非常に分かりやすくていい。

 


サッカーというのは時より人生や生活のある場面と繋がっているところがあり、それがとてもおもしろい。

 

それはサッカーというスポーツが他に比べて自由度が高く、誰がどこにいなきゃいけないルールも大きくないために広大なピッチをよく走り、攻守交代が激しくも、ゆっくりと時間を進める場面もあったりするからだと思う。

 

単純にゴールが2つあって、ボールがあって、手を使わなければいいだけで、細かいルールはオフサイドくらいなのだ。

 

その分、11人の人間が同じ方向に気持ちひとつにならなきゃいけない。自分の仕事だけを進めてたらいいというものでもなくなるときが瞬間的におとずれるのも特徴だ。
11人もの人数が一枚岩になることがどれだけ難しいことか、それこそ社会や学校の中で生きていれば身に覚えがあるだろう。

 


甲府の選手たちは自信を取り戻すことによって、伸び伸びとプレーし出した。
伸び伸びとしている姿が見ていて1番楽しいんだよ、これが見たかったんだよ!という気持ちになった。

 


この試合はディフェンダーながら攻撃に繋がる縦へのパスに特徴がある野澤陸のブレイクスルー的な試合にもなり得ていた試合であった。
その挑戦的なパスが時より失点に直結するミスになることが何度かあり、一部では非難の的にさらされていた。この試合では少し浮き球のパスを使って、仮にミスをしても致命的にならないような工夫をしていた気がした。

 

そしてフリーキックからのプロ初ゴールをヘディングで決めた。

 

途中あわや失点という場面を招くが、そこは最年長オミとベテランGK河田の防いでくれた。

 

途中から出場したフォワードの飯島陸も自分の強みが相手ディフェンスラインの後ろに抜ける動きであることを意識できたプレーが出来ていて、結果的にあわや得点という場面まで持ち込めていた。
今季の途中は自分の強みが何であるかを忘れたプレーが多かったのでよかった。

 

2人とも大卒1年目、2年目の選手なのだが、こういう選手たちの成長を見るのもまたひとつの楽しみだ。

 


この試合、結果は3-1

 

さすがにここから昇格とかは言えないし、今年も何人か主力は抜けちゃうだろう。
2022年しか揃わないこのメンツの甲府をもう少しだけ楽しみたい。

 

そしてあわよくば、昇格戦線に組み込む夢は見たい。